(2020/3/11 05:00)
日頃の風景はいつも当たり前にあるように思ってしまう。しかしその当たり前は、ある日突然目の前からなくなる。東日本大震災から今日で9年。“その日”はいつもの風景が一変した日だった。
身近には買い物。震災前から仙台市内で生活していたが、被災地は食料品、生活用品などさまざまな物資が不足する状況に陥った。震災から数週間は、何時間も店の前に並んだ記憶が残る。せっかく並んでも買えない時もあった。
最近も商店の棚からマスクやトイレットペーパーが消えた。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、大きな催しの中止・延期など、世の中で「縮小」の動きも目立つ。こうした風景を見て「震災直後の雰囲気に似てきた」との声も聞く。
当たり前ではない風景が広がる中、眠っていた記憶を呼び覚ます人も多いのではないか。政府主催の追悼式が中止となり、被災自治体による追悼式も中止や規模縮小など苦渋の決断となった。今年の3月11日は様子が違う。
間もなく春を迎える。暖冬の中、東北は記録的な少雪で、桜の開花も早まりそうだ。いつになればいつもの風景が目の前に現れるのか。今日は震災被害者のご冥福とともに、当たり前の風景が戻る日が来ることを祈りたい。
(2020/3/11 05:00)