(2020/4/1 05:00)
新型コロナウイルス感染症が東京都など都市部で広がる中、「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づく緊急事態宣言の発令時期について関心が高まっている。安倍晋三首相が宣言すれば、都道府県知事は法律に基づいて外出自粛要請などを実施でき、企業活動に大きな制約が生じる。宣言の強制力次第で事業継続が困難になることも予想される。産業界はどう対処すれば良いのか、見通しにくい状況が続く。(総合2・総合3・国際・自動車・生活1・生活2・東日本・西日本・深層断面に新型コロナ関連記事)
「ぎりぎり持ちこたえている状況だ」。西村康稔経済再生担当相は31日の閣議後会見で、緊急事態宣言を出す必要性が高まっているかとの問いに、こう答えた。特措法に基づく同宣言を発令するには、まん延の恐れが高いとして「国民生活と経済への影響が認められる」などの判断が必要だ。この条件を満たすのかどうか、瀬戸際の状況が続いている。
緊急事態宣言が発令されると、政府は対象の地域や期間を示す。対象の都道府県知事は外出やイベントの自粛、休校、娯楽施設の利用制限などを要請できる。また医薬品や食品など指定物資の売り渡し要請や収用、臨時の医療施設を整備するために土地・建物を強制的に使うことも可能になる。想定期間は21日間とされる。
要請に関しては罰則規定はないが、警官が街頭や路上を巡回する欧米のような運用となる可能性もある。この場合、実質的に強制力のある措置になり、いわゆるロックダウン(都市封鎖)に近い。
移動制限に関しては企業活動への影響が大きい。対象地域の住民は外出しにくくなり、外部からの流入も難しい。事業者が正当な理由なく要請に応じない場合、首長は「指示」という強い手段も行える。行政の指示を拒んでまで事業を続けることは困難だ。特に東京や大阪がロックダウンされると、多くの企業で本社機能がストップし生産や営業、流通などが急速に滞る。
第一生命経済研究所の試算では、東京都が1カ月間ロックダウンを行った場合、実質国内総生産(GDP)は都内だけで約5兆1000億円のマイナスになる。熊野英生首席エコノミストは「企業の稼働率は通常の約6割減になる。大企業は内部留保で何とかやっていけるだろうが、中小企業や個人事業主は極めて脆弱(ぜいじゃく)な立場に置かれる」と指摘する。政府は感染拡大の防止と同時に、大胆な安全対策を講じる必要がある。
(2020/4/1 05:00)