(2020/5/20 05:00)
認知症高齢者のケアは、働きながら親の介護を担う世代や、その所属する企業にとって大きな負担となる。地域格差が大きすぎるようでは問題だ。
認知症高齢者の数は2025年には約700万人に達する見込み。これは65歳以上の世代の5人に1人にあたる。
政府は15年に『新オレンジプラン』、19年には『認知症施策推進大綱』を定め、認知症の早期診断・早期対応の体制確立を目指してきた。19年9月末までに「認知症初期集中支援チーム」を全市町村に設置。さらに20年度末を目標として「認知症疾患医療センター」を全国500カ所に開設予定で、3月末までに約9割の設置を終えたという。
しかし、実際には地域間に相当の格差があるようだ。総務省行政評価局はこのほど、早期対応を中心とした地域の認知症支援施策の実態を調査し、その結果を公表した。
調査によると、「初期集中支援チーム」は市町村の人口や高齢者数に無関係に設置されており、同規模の市町村でも1チームあたりの高齢者数に最大33倍もの差があるという。また初期段階の認知症対策をすべきチームが対応困難事案の処理に偏る傾向があると指摘している。
一方、「認知症疾患医療センター」は設置から間もないこともあり多くが機能していない。実際にどんな役割を果たしたかをチェックする仕組みもない。総務省は、こうした問題点の解決を厚生労働省に勧告した。
新型コロナウイルス対策にも通じるが、日本の医療・介護等のサービスは基本的に自治体の役割となっている。地域ごとの施策の差が大きいと、住民にとって受けられるサービスに格差が生じる。
認知症は早期から治療を開始すれば進行を遅らせることが可能になってきた。早期対応の重要さを認識し、全国で並行して取り組めば、介護施設や介護に携わる人材の逼迫(ひっぱく)を緩和し、国全体の介護関連支出の抑制にもつながる。厚労省は早期対応の効果を示し、自治体が取り組みを確認できる指標を明確にして、実施を促してもらいたい。
(2020/5/20 05:00)
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