(2020/6/22 05:00)
「もし、かぞくが、コロナではたらいているということで、キミにつらいことがあったり、なにかいやなおもいをしていたりしたら、ほんとうにごめんなさい」
新潟の暖房機器メーカー、コロナ社長の小林一芳さんは2300人を超す社員の家族に手紙を宛てた。「コロナは悪者なの?」と子どもが問うケースを耳にし、「安心してほしい」と心底思ったそうだ。
国内で感染者が確認された年初以来、新型コロナウイルスとコロナという社名が世の中でどう見られ、社員がどう感じているか、気になっていた。資材の安定調達や商品販売の先行きに懸念が残る中、名前が同じだけでいわれなき“口撃”をされてはたまらない。
社名は、創業者が実験中に見たコロナ放電の発光色と石油コンロの青い炎が似ていることから命名、1935年に商標登録した。暖房機器のシンボルにと考えたのも、厳冬を知る人のやさしさだろう。
言葉はときに、凶器にも利器にもなる。事実、「俺はコロナだ」と感染を装って捕まった不届き者がいた。くだんの小林さんは手紙の中で繰り返す。「キミのじまんのかぞくは、コロナのじまんのしゃいん」。コロナ禍が、会社と社員、そして社員の家族を結び付けた。
(2020/6/22 05:00)