(2020/6/19 05:00)
この数年、京都は国内外から多くの観光客を迎え、人であふれていた。祇園で舞妓(こ)が追いかけられたり、嵐山の渡月橋を渡るのに行列ができるなど、正直風情がなくなっていた。バスは常に満員で、住民から苦情も出ていた。
それが今は、どこもかしこも、なにもかもが一変した。京の春を彩る『都をどり』の公演中止に続き、祇園祭の山鉾巡行など、多くの催事の延期や中止の報が続く。祇園祭は疫病の災厄除去祈願が由来で神事は行われるが、巡行は「密」回避で残念だ。
6月になり、鴨川の納涼床に出かけた。密を避けながら鴨川からの涼を直接感じ、久々に京都らしさを実感した。通りに人のにぎわいがなく、しっとりと床の風情が楽しめた。
観光ジャーナリストが「今だけ楽しめる観光」を紹介している。そう言えば、嵐山の渡月橋や嵯峨野の竹林、祇園・花見小路や先斗町の町並みを、観光客が映り込まないかたちで写真に収められたのは初めてだ。これも「今だけ…」の風情だろうか。
きょうから都道府県をまたぐ移動の自粛が全面解除となる。国内からの観光客が徐々に増えるだろう。観光は京都にとって重要だが、残りわずかな「今だけ…」を惜しむ気持ちも捨てられない。
(2020/6/19 05:00)