(2020/6/22 05:00)
7月からプラスチック製レジ袋の有料化が全小売店で義務付けられる。資源循環に対する認識を社会全体で共有し、環境に配慮した素材開発や代替品普及が進む弾みとしたい。
海に流れ出たプラスチックゴミによる環境汚染が問題視され、脱プラスチックは世界的な潮流だ。日本は廃棄物の適正処理の仕組みが構築され、プラゴミの海洋流出が少ないとされるが、使い捨てプラ製品の乱用に歯止めをかける必要はある。
一方で、留意すべきは、年間およそ900万トンに上る国内のプラスチックゴミの中で、レジ袋の割合はわずか5%足らず。これを削減するだけではプラゴミ問題の根本解決にはつながらない。代替素材開発や仕様の変更、製品のライフサイクルを含め資源循環のあり方を複眼的に捉える視点が不可欠であり、それが企業のイノベーションの原動力となる。
実際、海洋プラゴミ問題への関心の高まりとともに、自然環境下で水と二酸化炭素に分解する生分解性と呼ばれる機能を持つプラスチック開発や、これを容器包装に採用する動きが広がっている。容器包装に関わる300社以上が、素材開発のみならずリサイクルシステムの効率化を目指す取り組みも加速。産業界が一丸となって資源循環に挑む新たな姿を象徴している。
国も中長期的な開発、普及目標を盛り込んだロードマップを策定し、革新的な研究開発を集中支援する方針を打ち出している。とりわけ、今でこそ脚光を浴びる生分解性プラスチックは、40年ほど前の開発当時は、加工性や安定性がネックとなり実用化に至らなかった。克服すべき技術課題はいまなお山積するが、少なくとも生分解性の短所、長所を理解した上で素材として受け入れるまでに、社会が成熟しつつあることは大きな変化といえるだろう。
レジ袋の有料化は、容器包装が本当に必要かを考え日常生活を見直すきっかけになるが、それだけに留まらず、プラスチックを取り巻く課題や実情に目を向け資源循環の必要性を認識してこそ、政策的な意義がある。
(2020/6/22 05:00)