(2020/6/30 05:00)
きょうで今年も折り返し。年初は、令和初の正月や夏の東京五輪・パラリンピック開催への期待で浮き立つ気持ちだった。その後の新型コロナウイルス感染症で、世界は一変した。
古来、6月30日は「夏越の祓(なごしのはらえ)」の日。神社の境内に茅で作った大きな輪を掲げ、決まった作法で輪くぐりをする。日々の暮らしの“穢れ”をはらい、年の後半に向けた英気を養えると信じられてきた。
茅の輪の由来は日本神話だ。旅人に姿を変えた須佐之男命が、ある兄弟に一夜の宿を求めた。裕福な弟は断ったが、貧しい兄は手厚くもてなした。旅人は感謝の印として茅の輪を授け、兄一家はそれを身につけ疫病にかからず、健やかに過ごせた。
夏越の祓には別の風習もある。京都を中心に関西では、6月の旧称をとった「水無月(みなづき)」という菓子が知られる。これを30日に買いもとめ、厄払いと暑気払いにする。甘い小豆をのせた三角形のういろうは初夏の元気の素になる。
今年に限れば茅の輪くぐりを中止したり、水無月を売る和菓子店で混雑回避のための規制がされたり、コロナ禍は伝統行事にも打撃を与えている。せめて心の中に茅の輪を思い描き、みなさまの健康とご活躍をお祈り申し上げたい。
(2020/6/30 05:00)