(2020/8/14 05:00)
オシロスコープやマルチメーターなどの電気測定器はエレクトロニクス産業のマザーツールとして、研究開発や生産、保守・メンテナンス用途で重要な役割を担っている。電気測定器が持つ性能や精度が正しく維持されているかを検証する「校正(キャリブレーション)」は安心・安全・信頼につながり、モノづくりには欠かせない。校正事業者は培ったノウハウや技術力を生かし、高品質な校正サービスを展開している。
モノづくりに不可欠
電気測定器は電流や電圧、電力、抵抗値など電気信号を計測し、デジタル家電や白物家電、情報通信機器、自動車・車載、航空・宇宙など電子・電気に関わる産業に必要とされる。
こうした電気測定器は精度の維持管理が最も重要なポイントで、示す測定値の信頼性が求められる。測定値の精度を常に保つことで、開発製品や最終製品の信頼性や品質を高める。不具合などのリスクが発生しても、早期に回避できる。
電気測定器は経年劣化や電子回路の不具合などで測定値に影響を与える。信頼性が高く保証された測定値を求めるためには、電気測定器の「校正」が重要な要素となっている。
校正は基準となる標準器で、使用している電気測定器が示す測定値がどの程度ずれているかを確認する作業。標準器は国家計量標準にトレーサブルであることが大切で、品質や信頼性の維持、公的規格に準拠した製品の安定供給のためにも校正は不可欠だ。校正にはズレの補正や、電気測定器の修理は含まれていない。
品質の高い校正には、校正手順、校正作業とその環境の信頼性、校正した値の信頼性が最重要とされる。
日本品質保証機構(JQA)やユウアイ電子、東洋テックは高品位な校正を行うため、設備の充実や標準器の管理、技術者の高い校正スキルを強みに、ユーザー対応のサービスを展開している。校正コストだけでは見えない付加価値を提供し、日本のモノづくりを支えている。
新型コロナウイルスの影響により4、5月の校正依頼は鈍化したが、3社とも「6月から校正依頼が増加。例年なみの需要」と口をそろえる。「研究開発や生産の業務は止まることなく動いている結果」と分析する。
東洋テックは新型コロナの影響を考慮して、社員やその家族、ユーザーの健康を守り、安心と安全を届けるための社内用マニュアルを作成した。出張校正などユーザーの生産現場で校正の業務が遂行できるように対応を図った。「取引先からは好評で、マニュアルを求める声が多くあった」と述べる。
JQAは認定校正範囲の広さが強み。電気測定器メーカーを問わずに校正が可能で「自動車・車載、航空産業からの校正が増えている」と最近の傾向を話す。
ユウアイ電子は新社屋完成で電気校正室のスペースを倍に拡張。同時に圧力計や温・湿度計、角度計まで校正範囲を広げた。「Denkeiグループのネットワークを生かすことで、ユーザー要求があった。今後も範囲拡張を予定」と述べる。
JQAは2021年初夏に北名古屋市の中部試験センターと師勝試験所の一部施設の移転を予定。電気測定器の校正強化を図る。ユウアイ電子は自動車や車載市場の深耕を目的に、愛知県知立市に校正室を構築し、10月からサービスを始める。
(2020/8/14 05:00)