社説/ワクチン実用化へ 安全性確認しつつ、国産化急げ

(2020/8/28 05:00)

新型コロナウイルス感染症のワクチン実用化が見えてきた。安全性を大前提に、接種が混乱なく始まるよう準備を進めてもらいたい。世界のワクチン争奪戦に巻き込まれないために、国産化へ十分な支援も必要だ。

政府は米ファイザー、英アストラゼネカと新型コロナワクチンの供給で基本合意した。合計で2億4000万回分。ただ、いつ、どれぐらいの量が入手可能かといった計画は明確になっていない。

政府のコロナ対策分科会は、ワクチン接種の優先順位について、高齢者や基礎疾患を有する人など重症化リスクの高い層と、新型コロナ診療を行う医療従事者を優先すべきだと提言した。さらにその他の医療従事者や救急隊員、高齢者施設の職員や妊婦も検討する対象とした。

2021年初頭にはワクチンの最初の供給が始まる見通し。高齢者とは何歳以上か、基礎疾患の対象者は誰が判断するか、感染者の多い地域を優先するかなど、対象者の基準や接種方法を決めておく必要がある。行政、医療機関、製薬会社、製薬卸などが綿密に連携し、接種時の混乱を回避してもらいたい。

今後接種の対象者を拡大していくには、ワクチンを国産化し安定供給する態勢が不可欠だ。アンジェスが臨床試験段階に入り、塩野義製薬も年内に臨床試験を開始する計画。補正予算を有効活用して、早期の実用化に結びつけてもらいたい。

気をつけたいのは、ワクチンは万能ではないということだ。本来なら数年かかる開発を、世界が短期間で実施している。核酸やウイルスベクターなど、新規性の高い技術を用いるものもある。ワクチンで重篤な副反応が生じる危険性も指摘されている。リスクを念頭に、さまざまな種類のワクチンに目配せするのが賢明だ。政府がワクチン接種で生じた健康被害を製薬会社に代わって賠償する方針を示したのは、開発を進める側にとっても安心材料になる。

インフルエンザワクチンも例年以上に需要増が予想される。製薬会社は増産の準備を進めてもらいたい。

(2020/8/28 05:00)

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