(2020/9/29 05:00)
営業技術部 二村亮さん(文中敬称略)
「一片の後悔もありません」。今年4月に愛知県内の大手自動車部品メーカーから、コスモ技研に転職した二村亮(26)の表情は清々しい。安定した大手から、規模では中小と言えるコスモ技研に転職を決めたのは「10年後の自分をイメージした時、自身に身につく確かなスキルがほしかったから」。同社の家族的な雰囲気も魅力だった。
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大切にされている実感
地元愛知県でも新型コロナウイルスが感染拡大していた6月中旬、勤務中の二村のスマートフォンが鳴った、40度近い高熱を出した妻からのSOSだった。「入社間もない自分が、急に早退していいものか」。躊躇しながら直属の上司である営業技術部門長の柴田和宏に相談すると「すぐに行ってあげて。やれることあったら何でも任せて」と快く送り出してくれた。
急ぎ帰宅すると、妻はソファでぐったりしていた。その傍らには状況がわからず無邪気にはしゃぐ2歳の長女。「あと少し遅れていたら大変な状況になっていたかもしれない。自分だけでなく、家族や周りの人も大切にされていると強く実感できた」と振り返る。入社面接時に創業社長の五十嵐宏一から家族的な社風であることは聞いていたが、まさにそれを実感した出来事だった。
「常に誰かがサポートしてくれる。その心強さが、自分のできることをしっかりやらないといけないという前向きな責任感に変わる」。そこに見返りを求める負の感情はなく、社員の一体感が社内全体に好循環を生み出している。
世界に一つの一品料理への挑戦
二村が配属された営業技術部門は顧客の要望に応え、困り事を解決するためのシステムの企画を立案する。同社が受注する案件は開発要素が多く、難易度が高い。いわば一品料理の特注設備だ。取引先は化学、重工業、工作機械、航空、医療、医薬、食品など幅広く、一流の大手企業ばかり。
現在、担当しているのは医療関連向けシステム。もっとも気を遣う異物混入や汚れを防ぐため、検査工程を工夫したロボット設備の提案に知恵を絞る。「他社がすぐに手を出せないような難しい案件ばかり請け負っているため苦労はあるが、世界に一つしかないモノを作るうれしさがある。次はどんな製品を扱うんだろうとワクワクする」と刺激的な日々を送っている。
効率アップアイテムは自由に購入
社長の五十嵐は「社員の満足度を高めることが顧客満足度の向上につながる」という強い信念を持つ。「係わる人みんなが幸せでありますように」という企業理念の実現のため、心血を注ぐのが人材育成だ。
役割が細分化されている大手では、業務に役立つスキルでも、自身の役割と異なる場合は「それは君の仕事じゃないよ」の一言で一蹴されてしまう。二村も前職で経験し、それも転職の動機となった。ところが、コスモ技研では、「営業の身でも技術関連の講習を受けられる。業務に直接関係なくても、向学のため必要と申請すれば講習への参加を推奨してもらえる」と社員が成長するたの投資は惜しまない。
業務効率を高めるためのアイテムは、5万円以下なら申請も不要。自己判断により経費で購入することができる。
二村がまず驚いたのは会社支給の安全靴。有名スポーツ用品メーカーの上位モデルで価格は何と数万円。「靴底にゲルや敷きパッドが入っており、ずっと疲れず歩ける気がする」と感激した。
初めて自身で選んで購入したのはマウスだった。トラックボール付で、机上で広げる書類が増えてもマウスを移動する必要がない。他の社員も手が疲れにくいマウスや5本指マウスなど、それぞれ好みのマウスを愛用している。会社支給のパソコンも、高性能CPUを搭載した上位モデル。柴田は「あくまで仕事のしやすさや効率化が目的で、高級品をそろえるということではない」と説明する。パソコンなら、立ち上げに1分かかるものより10秒で済むものを買うという発想。例えば二村のような営業技術職の場合、顧客へのプレゼン中にパソコンが固まって動かなくなることは許されない。
自由の実現は社員の信頼関係が前提となる。時に厳しく、効率化には金で時間を買うという緊張感が伴う。仲間がもし間違った方向を進もうとした時には、社員同士で忌憚なく指摘し合える土壌がある。
社員は常にオフィス内を早足で移動する。きちんと大きな声で話し、オフィスをきれいに保つ。二村は入社してから「これら全てが現場での行動につながっている。現場で意識しなくても自然にできるよう、普段から習慣付けしている」ことを知った。会議での沈黙もタブーだ。「10人集まって1人3秒づつ黙ったら30秒が無駄になる。発することで議論が生まれる」(柴田)と徹底している。
底辺を広げ、大きな三角形をつくる
コロナ禍での転職となった二村は、意欲を燃やしていた外部講習会にまだほとんど参加できていない。顧客との接点も制限され、楽しみにしていたバーベキューを囲んで社員同士のコミュニケーションを深める「座談会」も開催自粛が続いている。
それでも「年齢や役職に関係なく、自分の考えを発信すれば必ず内容に対して議論し、判断してもらえる」とフラットさを肌で感じ、充実した日々を送る。
目標はしっかりとしたビジネスマナーを身につけ、営業も技術もわかり、顧客と内容の濃い話をして幅広い情報やニーズを引き出せる人材。「短い底辺からできる三角形は小さい。営業も技術も貪欲に学び、幅広い知識を身につけ、大きな三角形をつくれる”コスモマン”になりたい」と目を輝かせる。
コスモ技研・アイデアを生む仕掛けが満載、社屋増築完成
青みがかったガラス張りが、表参道のファッションビルのように洗練された印象の近代的なビルー。コスモ技研が進めてきた増築工事がこのほど完成した。二村亮さんに案内してもらうと、本社ビルにちりばめられた、大手の顧客をうならせるアイデアを生む数々の仕掛けが見えてきた。
視覚から脳を刺激
重厚感のある玄関扉を開くと、エントランスは高級感溢れる大理石の床、心地よいヒーリング音楽が流れ、良い香りが漂う。1階には落ち着いたモノトーン調と、ビビッドなイタリアンレッドのインテリアが目を引く2つの商談室。奥へ進むと、多種多様なロボットを備えた「研究ラボ」がある。どんなに難しい案件でも解決の糸口を見つけ出す、頭脳の中枢だ。
二村さんらが働くオフィスは2階。一番奥に位置する五十嵐宏一社長の机からは、全社員の様子が見渡せる。机は袖机も含め通常の2倍以上。全員がパソコン2台使いで、効率的な作業ができる。人間工学に基づいて設計されたイスは「長時間のデスクワークも疲れない」(二村さん)特注品だ。
増築部分の青いガラスを通して美しい光が差し込む打ち合わせスペースにはワインレッドのカーペットが敷かれ、雰囲気が一変する。「オフィスや他の会議室とは全く異なる雰囲気で視覚的に脳を刺激し、アイデアが生まれやすい空間になっている」(同)という。キッチンには多種多様な飲み物やお菓子が常備され、自由に飲食できる。飲料水も健康の観点から「トリム水」にするこだわりようだ。
座談会で世代間交流深める
3階に上がると、ラウンジのような開放感ある空間が広がる。中でも社員に人気なのが約6畳の畳スペース。あぐらをかいて座ったり、横になったりしてくつろげる場所となっており、二村さんにとっても「一番落ち着く場所」。週末には家族連れで出勤した社員が仲良く昼食をとる光景も見られる。
ラウンジにはロールスクリーンやプロジェクターもあり、プレゼンテーションも可能。社員のコミュニケーションの場として2ヶ月に1度の「座談会」もここで開催される。座談会はテーマを決めて個人発表も行い、バーベキューを囲みながら世代や肩書きを超え全社員が和気藹々と盛り上がる。
このほか、アイデアが生まれやすいよう、各部屋の壁紙を変え、思いついたアイデアをすぐ書いてその場で議論できるよう各部屋の壁面にホワイトボードを設置。高級ホテルのようにきれいなトイレも含め、全ては「社員が満足して働くことで顧客にも良い提案ができ、皆が幸せになれる」という五十嵐社長のポリシーを具現化している。同社がなぜ他社が敬遠する難しい案件を解決できるのか、本社を訪れると、その答えの幾つかを垣間見ることができる。
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