産業春秋/サンマ不漁

(2020/9/24 05:00)

サンマを塩焼きにして味わった。走りのせいか淡泊だったが、ほろ苦さに秋の気配を感じた。子どものころ七輪焼きを任され、黒焦げにして叱られた記憶がよみがえった。

「今年は絶望的だ。この時期でも漁場にサンマがいない」(北海道漁業協同組合連合会)。水産庁によると昨年の国内水揚げ量は4万6000トンで1956年の統計開始以来最低だった。今年は残念な記録を更新しそうだ。

サンマが庶民の食卓から遠ざかりつつある。数年前までは旬になると1尾100円を切る大衆魚の代表格だった。今年は旬になっても、さほど値下がりは期待できそうにない。

日本、台湾、中国など8カ国・地域でつくる北太平洋漁業委員会は、今年のサンマの漁獲上限を約55万トンに設定した。だが昨年の漁獲量の3倍近く、資源保護とは程遠い。公海に大型船を繰り出し、加工用に水揚げを伸ばしてきた台湾や中国も資源が枯渇すれば共倒れになる。

高い海水温も影響し日本近海になかなか南下してこない。政府は漁獲上限の引き下げを求める考えだが、中国との交渉は難航が予想される。古典落語「目黒のさんま」に興じた昔がなつかしい。「さんまは缶詰に限る」時代は勘弁願いたい。

(2020/9/24 05:00)

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