(2020/11/3 05:00)
民意を真摯(しんし)に受け止め、大阪の成長戦略の明確化に対し、大阪府・市は改めて産業界と連携を深めてもらいたい。
大阪市をなくし四つの特別区を設置する「大阪都構想」は、1日実施された住民投票の結果、5年前と同じ僅差での反対多数で再び否決された。大阪市は政令指定都市として存続が決まった。
地域政党「大阪維新の会」の松井一郎代表(大阪市長)や吉村洋文代表代行(大阪府知事)らが都構想で目指したのは、府市の二重行政を恒久的に解消し、一体で成長する仕組みづくりだった。ただその代償で、歴史ある大阪市をなくすことへの抵抗は予想以上に大きかった。
大阪市民である中小経営者は「大阪市をなくし、身の回りのことだけを行う四つの特別区にするのは、“シティー”の政治的、社会的、文化的機能の喪失を意味する。市と府の多様性の力もある。大阪市民は正しい選択をしたと思う」と振り返る。
都構想はつまずいたが、大阪維新の会はこの10年ほどで大阪を活気づける仕組みを相次ぎ導入してきた。大阪市営地下鉄の民営化でトイレがきれいになり地下空間の有効活用は進む。大阪市内の大阪城公園や天王寺公園なども民間運営委託でにぎわいを取り戻した。そして2025年開催の「大阪・関西万博」も国を動かし、誘致に導いた。
ただ新型コロナウイルスの影響から、大阪の経済政策で重視したインバウンド(訪日外国人)頼みの危うさも表面化した。カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致を目指すが、コロナで暗雲が漂う。帝国データバンク大阪支社の本社移転企業調査で大阪は19年も企業の転出が転入を上回り、38年連続で本社流出が続いている。
大阪の在り方が注目された今こそ、府・市は関西の他自治体や産業界と連携し、民のパワーを発揮できる成長戦略を明確に描いてもらいたい。中小企業・ベンチャーの活動が光る仕組み作りを加速し、政府が進める国際金融都市構想の候補に挙がっていることも前向きにとらえ、大阪の力の発揮を望みたい。
(2020/11/3 05:00)
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