(2020/11/18 05:00)
民間運用による初の宇宙船に、日本人が参画した意義は大きい。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙飛行士の野口聡一さんを乗せた米宇宙企業スペースXの新型宇宙船「クルードラゴン」が打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)に到着した。野口さんはISSでiPS細胞(人工多能性幹細胞)の培養や燃焼実験などの科学実験、ロボットアームの操作など多くのミッションに取り組む。
野口さんはこれまで米航空宇宙局(NASA)の宇宙船「スペースシャトル」やロシア宇宙船「ソユーズ」に乗り宇宙活動に携わり、今回新型宇宙船に乗る最初の日本人となった。挑戦的なミッションをこなせる人材という周囲の期待は大きい。
新型宇宙船の開発・運用は2024年の月面への有人着陸を目指す米国主導の「アルテミス計画」につながる。ISSの運用は24年までで利用延長に関する検討はあるが、今後の国際宇宙開発は月近傍有人拠点「ゲートウェー」の建設や月開発に軸足を移していく。ゲートウェーへの人の輸送に新型宇宙船を利用することになるだろう。
さらに民間の新型宇宙船が宇宙飛行士の運搬に使われる端緒ともなる。すでに米国をはじめとする世界で多くの宇宙ベンチャーが設立され、宇宙ビジネスへの投資が盛んになっている。
日本でも三菱重工業やIHIなどの従来の宇宙開発企業に加え、今まで宇宙開発をしたことがない非宇宙企業やベンチャーによる宇宙ビジネスへの参入事例が増えている。クルードラゴンが宇宙インフラの一つとなったことで、民間の力による宇宙開発が進むことが期待される。
JAXAは21年秋にも日本人宇宙飛行士を新規募集する。各国が将来の月探査に向けた宇宙飛行士の育成を始めており、日本も急ピッチで進める必要がある。今回の募集から宇宙飛行士の選抜や訓練方法などに企業のノウハウやアイデアを活用する計画だ。野口さんらに続き宇宙で活躍する人材を、官民一体となって育成する土台作りが重要になるだろう。
(2020/11/18 05:00)
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