社説/21年度政府予算案 経済回復で巨額赤字に歯止めを

(2020/12/22 05:00)

非常時を乗り切った先のビジョンを描くことが大事だ。

政府の2021年度予算案は新型コロナウイルス対策の巨額の補正支出で大きく傾いた国の財政を、なんとか正常軌道に戻そうと苦心を重ねた。一般会計は106兆6097億円と過去最大規模に膨らんだが、社会保障関係費を除く一般歳出を前年度比330億円増にとどめたことに苦心の一端が見える。

財務省幹部は「バラマキ的給付から、経済を動かす主体への支援に転換する」と決意を述べた。20年度の第3次補正と21年度予算に5兆円ずつコロナ対策予備費を計上。この範囲でコロナの打撃を止血するというのが予算案のメッセージだ。同省は21年度から経済活動の回復と、法人税などの税収増を見込むとしている。

全国的な感染拡大の渦中に、脱炭素化・デジタル化に向けた中長期の展望と施策を示したことは評価したい。政権の目玉政策であるデジタル庁は、各省庁の関連予算と人員をかき集めて3000億円規模で9月に発足予定。脱炭素化に意欲的な企業に対する成果連動型の低利融資創設、科学技術振興費の増額など細かな対策を並べた。

一方で、具体的な中身が見えにくい巨額事業が生まれたことも忘れてはならない。財政投融資から4兆円を投ずる大学ファンド創設、第3次補正で2兆円を確保したカーボンニュートラルのための基金。さらに計10兆円あるコロナ対策補助金もある。政府にはその都度、丁寧な説明を求めたい。

21年度予算の国債依存度は40・9%と大きく悪化。前政権の経済政策「アベノミクス」による税収増を吹き飛ばしてしまった形だ。短期国債主体に資金を調達する“自転車操業”状況がしばらく続く。財投が当初予算で過去最大に急増したことも将来の財政の不安要因だ。

「10年間でリーマン・ショック、東日本大震災、コロナと3度の危機があった。平時の財政は黒字でなければならないと痛感する」(財務省幹部)。コロナ克服後の経済成長で正常化を目指してほしい。

(2020/12/22 05:00)

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