(2021/1/28 05:00)
世界全体で新型コロナ感染症が収束しなければ、世界経済の成長は見通せない。
国際通貨基金(IMF)は、2021年の世界全体の成長率を5・5%とし、前回(20年10月時点)予測から0・3ポイント上方修正した。20年のマイナス3・5%からの急回復を期待し、さらに22年は4・2%成長を見込む。
IMFは回復の要因として、先進国でワクチン接種が始まり、その後押しで景気が加速することや、米国や日本の大型追加経済対策を反映させた。国別では米国は5・1%(前回比2ポイント増)、日本は3・1%(同0・8ポイント増)と上方修正した。
一方で欧州連合(EU)圏は4・2%(同1ポイント減)と見通しを引き下げた。感染再拡大で大規模なロックダウン(都市封鎖)を続け、ワクチン供給の遅れも発生していることから、経済回復が減速するとみている。
IMFの予測はワクチンが夏までに先進国と一部の新興国で利用され、22年下半期までに大半の国で利用可能になることを前提としている。
要はワクチン頼みの成長見通しである。しかし、足元ではワクチン供給に支障が生じ、先進国間でも囲い込みが行われている。EUは製薬会社に対し、域内で生産したワクチンの域外輸出に報告を義務づける規制導入を表明した。
自国民の命を守るのは国のリーダーの責務でありやむを得ない面もあるが、本来なら世界保健機関(WHO)が、世界の感染状況を俯瞰(ふかん)し、適切な配分を差配する役割を果たすべきである。ワクチンの供給が、米ファイザーや英アストラゼネカ、中国シノバックなど一部の製薬会社に集中していることも供給不足の要因となっている。
世界のコロナ感染者が1億人を突破したが、これは検査で判明した数であり、現実には途上国にばく大な感染者が存在する。ワクチンを平等に分配するための国際枠組み「COVAXファシリティー」への資金拠出や「特許プール」の活動強化へ世界が協力しなければならない。米バイデン大統領はじめ先進国首脳の指導力が必要だ。
(2021/1/28 05:00)
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