(2021/1/29 05:00)
コロナ禍で、パート・アルバイトなどの非正規労働者、中でも女性の生活困窮が深刻さを増している。自殺者が高止まりする要因になっているとの指摘もある。官民が協力し公的支援制度の活用を促したい。
野村総合研究所が2020年12月に実施したパート・アルバイト女性の実態調査によると、コロナ禍の前に比べ約26%で業務量が減少。うち5割以上減少(約40%)と「休業手当支給なし」を合わせた「実質的失業者」は90万人に上ると推計している。
見過ごせないのは業務量が減少した女性のうち休業手当を受け取っているのは約24%にすぎない点だ。約6割は自分が「休業手当」や「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」の支給対象であることを知らず、制度の周知が不十分な実態が浮き彫りになっている。
支援金・給付金を知りながら約86%が申請していない。「勤務先に申請を知られることへの心理的抵抗」(約14%)や「勤務先が申請に反対・協力してくれない」(約4%)など企業に起因する理由が2割弱含まれ問題の根深さがうかがえる。
制度の訴求力を高めるには、国や自治体が各種支援策をパッケージにしてパート・アルバイト女性を雇用する企業にプッシュ型で情報提供したり、自治体にコロナ困窮者の専用相談窓口を設置したりするなど工夫の余地があろう。市場構造の変化で景気回復後に業績が改善しない企業も出てこよう。転職相談会を開くなどハローワークと連携して包括的な支援体制を強化する必要がある。
公的支援制度の利用に消極的な企業は、企業の社会的責任(CSR)を問われ、景気の回復過程で人手不足感が強まった時に採用難というツケを払うことになりかねない。非正規雇用者は景気の「調整弁」ではなく、事業継続のための貴重な経営資源であるとの認識が重要だ。
調査で休業・業務減の女性の半数が「新しい仕事を探したい」と考えている点は留意が要る。コロナ禍で露呈した非正規雇用の脆弱(ぜいじゃく)性。対応姿勢に企業の真価が試されている。
(2021/1/29 05:00)
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