(2021/2/23 05:00)
遠大な目標だけでなく、足元の小さな不便の解消を早期に進めてもらいたい。
経団連は「レジリエントな経済社会」の構築を求める提言を公表した。新型コロナウイルスが日本社会の脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにしたことを教訓とし、企業と国・自治体が、それぞれの立場で非常事態に備える必要性を提起している。
企業としては、事業継続計画(BCP)を自然災害以外に広げることと、サプライチェーンの強靱(きょうじん)化が重要だ。一方、国や自治体には社会変革を先導することが求められる。
その核となるのがデジタル化である。政府のデジタル対応が不十分であったことが、コロナ禍で国民生活や企業活動を大きく制約した。中長期の施策としてデジタル政府の構築を加速しなければならない。
決して実現に時間がかかるものばかりではない。参考になるのは2020年、総務省行政評価局がまとめた二つの調査だ。
ひとつは国家資格の更新時講習のオンライン化の実態調査。中小企業診断士や各種の技術管理士など更新時講習の義務がある98資格のうち、91資格について所管省庁は「オンライン講習等が可能」としている。しかし実施しているのは29資格と4割以下にとどまる。
オンライン講習未実施の理由で最も多いのは、導入費用が整備されていないことだった。しかし「本人確認・受講確認の方法が分からない」など、初歩的な検討すらしていないケースも少なくないという。
もうひとつの調査は、電子調達システムの利便性に関するものだ。調査した95件のうち、3割強にあたる31件で必要な資料のダウンロードすらできなかった。特に地方部局は半数近くが対応していない。理由としては「これまでの取り扱いに倣(なら)っているため」が最も多かったという。
さほどハードルの高くない改善でも、実現すればテレワーク普及の助けとなるに違いない。国と自治体には、より多くの利用者にデジタル政府の恩恵が及ぶような具体策を期待する。
(2021/2/23 05:00)
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