産業春秋／伝える努力

仕事柄首相の記者会見は欠かさず見るようにしている。メモはノートに手書きで記入するのが基本だが、それ以外に、音声認識ソフトを活用している。１８日夜の１都３県への緊急事態宣言の解除方針を決めた際の会見を聞いて感じたのは、首相の話し方の変化だ。

口調がゆっくりになり、語尾まで明瞭になっている。過去の会見では、言葉の言い間違えや最後が消えてしまっていたり、「そうした」「こうした」といった指示代名詞が多用されていたりで、正直聞きづらかった。

最近は会見のたびに話し方が変わってきたと思っていたが、今回はそれをはっきりと感じた。実際音声認識ソフトでも、その効果は歴然で、かなり正確に音声が文字に変換されていた。

事前に努力して話し方と向き合ってきたのだと拝察する。首相自ら伝えることの大切さ、難しさを痛感したのだろう。

きょう緊急事態宣言が全国的に解除され、日本は新しい段階へと踏み出す。桜が満開を迎え、企業は異動や転勤の最盛期。「みんなでぱーっと」行きたい気持ちをどうやって抑えるか。ましてや首相の会見を聞いたことがない若者に感染対策をどう伝えるのか。若者の心に響く、明瞭な言葉を聞きたい。