産業春秋／子ども庁の疑問

ランドセルがカラフルになった。赤や黒の定番にピンクやブルーが交じり、新入生が朝の通学路を行く。花が咲いたようで何ともかわいらしい。

コロナ禍で収入が減り、ランドセルを買えない家庭が増えているという。ランドセル製造の協和（東京都千代田区）は、支援団体を通じて約４４０個のランドセルを本年度の新入生に寄贈した。同社の社会貢献活動は、東日本大震災の被災地支援から始まった。

自民党の若手議員有志らが、子どもに関連する教育や福祉などの政策を一元的に担う「子ども庁」の創設を柱とする提言をまとめた。縦割り行政の打破を掲げ、次期衆院選で党の公約に盛り込むという。

少子化が進む中、子どもを重視する政策が必要なのは当然だが、新たな庁の創設は、唐突感と実効性に首をかしげたくなる。子ども政策だけ関係省庁から切り出すのは現実的か、政策を束ねれば妙策が出るのか、疑問は尽きない。

協和では男性社員も育児休業を取得し、チームでカバーする文化が根付いている。８０歳まで勤め上げた社員もいるそうだ。子どもたちの笑顔を守るには、子育てしやすい家庭環境の整備が何よりも大切だろう。より視野の広い政策を求めたい。