産業春秋／閑古鳥の美声

夏の訪れを告げるカッコウが近所に飛来した。「静かな湖畔の森」ではなく、住宅地でさえずりが聴けるとは思わなかった。夜明けとともに「独唱」が始まり、天然のカッコウ時計で目覚めるぜいたくを味わっている。

日本野鳥の会によると、カッコウの多くは初夏に東南アジアなどから九州以北に渡来し、高原や疎林地で繁殖活動に入る。オオヨシキリやホオジロなど宿主となる鳥の巣に卵を産みつけ育てさせる托卵で知られる。

ずる賢いように見えて托卵相手の減少など環境の変化に弱く、自治体によっては絶滅危惧種に指定している。カッコウが多く渡来する地域は野鳥の種類が豊富で、生物多様性を測る指標種との研究報告もある。

閑古鳥はカッコウの別称とされる。客足がなく商売がはやらない「閑古鳥が鳴く」の由来は諸説ある。「憂き我をさびしがらせよ閑古鳥」（松尾芭蕉）。さえずりが物悲しく聞こえたとの説が有力らしい。

商店街で「長らくのご愛顧に感謝します」と、店じまいの貼り紙を目にするようになった。帝国データバンクの調べでは、コロナ関連倒産が累計で１５００件を超えている。緊急事態宣言が長期化し、閑古鳥も美声をからしていることだろう。