(2021/7/19 05:00)
自動車産業にとって2050年のカーボンニュートラル(CN)実現への道筋はいまだ明確ではない。だからこそ、さまざまな技術を持つことが、持続可能性への強みになる。
自動車の脱炭素化技術は、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)、水素エンジンなど。現状ではどの技術も一長一短がある。
EVは走行時の二酸化炭素(CO2)の排出はゼロだが、搭載するリチウムイオン電池は製造段階で大量のCO2を排出する。FCVは生産コストが高止まり状態にあり、水素エンジンは開発の途上にある、などだ。
欧州連合(EU)は35年に乗用車のCO2排出量ゼロ方針を表明した。ガソリン車やディーゼル車に加え、ガソリンを使うHVも新車販売が禁止される。自動車メーカーにEVへの大転換を強力に促すものだ。EUは同時にEU域外からの輸入品に炭素価格を賦課する「炭素国境調整措置」の導入も表明した。
意欲的な政策でCN実現へ世界をリードするEUの覚悟を示したとも言えるが、EVシフトがCNへの正しい道なのかは明確ではない。むしろHV技術で出遅れた欧州が環境の美名の元に、域外車を閉め出す狙いも透けて見える。国境調整措置には、WTO(世界貿易機関)ルール違反への懸念もある。
もちろんCNをどう乗り切るかは、自動車メーカー各社が最重要の経営戦略として考えるべきことだ。現状では多様な技術を選択肢として持つことが、すそ野が広い日本の自動車産業にとって有効なのではないか。
政府は自動車電動化方針を示すが、今後の具体策において企業が考える戦略を狭めるような政策をとるべきではない。あくまで目標は50年であり、30年代は過渡期である。
その上で、日本が持つ技術の価値が世界で評価されるよう、国際社会で堂々と主張すべきだ。途上国には安価な自動車を求めるニーズも根強い。世界全体でCNを実現する方策に日本が貢献できる場面は多い。
(2021/7/19 05:00)