産業春秋／夏祭り

先週末の晩、家路を急ぐ京阪電車が祇園四条駅（京都市東山区）に到着すると、浴衣姿の若い２人連れの女性が勢いよく降車して、階段を駆け上がっていくのが見えた。そうか祇園祭前祭（さきまつり）の宵山（よいやま）だったかと気づいた。

新型コロナウイルス感染症は収束せず、各地の夏祭りや花火大会は昨年同様、中止や規模縮小を余儀なくされている。祇園祭の宵山は自粛の中で実施。山鉾（やまほこ）巡行は２年連続中止で、代わって拝礼巡行という形になった。準備してきた人、楽しみにしていた人の無念を思うと心が痛む。

大型イベントの代表、東京五輪も無観客。選手も関係者も残念だろうが、せっかくホスト国となったのだから世界のアスリートと同じ時間・空間を共有する貴重な経験を若い人にさせてあげたかった。

コロナ禍では一人ひとりに互いを思いやる想像力が求められている。老若男女だれもが憂鬱を抱えている。最悪の事態への備えが足りず、確かな希望を見いだせていない現状がもどかしい。

来月は旧盆。京都は五山送り火で先祖の霊を送る。大文字は今年も、点火位置を６カ所に減らして実施する計画という。各頂点の炎と炎を結んだ大の字を想像して、静かに鑑賞しようと思う。