(2021/7/30 05:00)
失われた社会の信頼を取り戻すためには、現場とトップが一体となって社内の多くの仕組みを改めなければならない。
三菱電機の新社長に、漆間啓専務執行役が昇格した。品質問題など相次ぐ不祥事の責任を取って退陣した杉山武史前社長の後、企業風土の刷新に取り組む。同社を見る世間の目は厳しく「創立以来、危急存亡の時」という漆間新社長の思いを全社員が共有する必要がある。
同社では近年、空調機などの品質問題だけでなく、労務問題や情報システムのセキュリティー問題など、相互に関連のないさまざまな不祥事が一気に吹き出している。社風や組織そのものに原因があるということは否定できない。
総合電機は「上意下達」が働きにくい業態である。三菱電機は典型的な事業本部制であり、新トップが強い決意を示したとしても、個々の現場の事情が優先されてしまいがちだ。
杉山前社長は「お客さまとの関係よりも自分たちの論理を優先するような業務の進め方だった」と反省を述べている。社内に数多くある非定型のルールを見直すのは経営層以上に、現場に近い管理職の役割である。
トップは2期4年という不文律を堅持してきた同社にとって、異例の社長交代は社内に大きな衝撃を与えた。今後はトップと現場の結びつきをベースに、変革を進めることが大事だ。社外からトップを招くのではなく、従業員から信頼を得ている手堅い人選をした同社指名委員会の判断を評価したい。
幸いにして、三菱電機のもうひとつの社風は“思い切りの良さ”である。不採算事業を整理し、強い分野に集中し続けることで同社は個々の事業を高シェア・高収益に磨き上げてきた。トップダウン式の買収・合併ではなく、現場の日常の努力が生んだ成果である。次は思い切って、従来のあしき社内慣習を捨て去ってほしい。
信頼回復の道は険しい。「新しい三菱電機グループをつくる」という漆間新社長の決意が、大きな改革の第一歩となることを期待する。
(2021/7/30 05:00)
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