(2021/8/2 05:00)
有効な対策がない以上、ワクチン接種の加速と国民の行動の変容を訴え続けるしかない。
新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。政府は東京・沖縄に加え、神奈川、千葉、埼玉と大阪への緊急事態宣言を発令した。まん延防止等重点措置の対象も拡大する。
ただ、発令が継続中の東京で最も感染者が増加する状況を見ても、現在の対策では効果が限られることは明らかだ。「コロナ慣れ」や「コロナ疲れ」といった言葉も耳にする。
政府の責務は、何より正確な情報の提供である。専門家の一部からは「前例のない状況」といった悲観論も聞かれるが、感染者数の増減だけでなく、国民に科学的・合理的な分析を示すよう努めてほしい。
大半がワクチン接種を終えた高齢層の新規感染や重症化は劇的に低下した。新規感染者の中心は20―30歳代の若者だ。今後は若者の心に響く対策で、行動変容を求めていくのが肝要だ。
現時点で切り札がワクチン接種であるのは間違いない。アストラゼネカ製ワクチンを公的接種に加えるのは適切な判断だ。国民が前向きな気持ちで臨めるよう、接種の利益とリスクの情報を正しく伝えてもらいたい。
若い世代には、自分たちがワクチン接種に取り残されていると感じる人も、また接種に懐疑的な人も多い。今のうちからインセンティブのあり方を考え、接種率を高める工夫をすべきだろう。
飲食店については、これ以上時短営業や酒類の提供の規制を求めたところで、守りきれない店が増える一方だ。休業する店への協力金支給を加速化し「正直者がバカを見る」状況の改善が急がれる。感染対策を講じる店への認証制度や、入店時にQRコードなどを読み取らせ感染者が発生した時に濃厚接触者を早期に把握するといったIT技術の活用を進めるべきだ。
人流を減らせば感染拡大を抑制できる。しかし一律の規制は不可能だ。国民各層がそれぞれの立場で行動できるためにも、カギとなるのは公的で正確な情報提供だ。
(2021/8/2 05:00)