(2021/8/10 05:00)
役人の命を受けた陶器師は念を入れて上等な茶わんを焼く。役人は殿さまに差し上げ「陶器は、軽い、うすでのをとうとびます」と伝える。
戦前・戦後の児童文学界で活躍した作家の小川未明は今年、没後60年。郷里の新潟県上越市は図書館の一角に『小川未明文学館』を設け、功績をたたえる。
伝記によれば、編集者の仕事を捨てて筆で身を立てようとしたものの、生活は困窮。疫病で二児を失い、自らもスペイン風邪にり患し重症化したという。
代表作『赤い蝋燭(ろうそく)と人魚』をはじめ、その作風は幻想的であり、同時に人間性の尊重を訴える。『金の輪』では病に伏せっていた太郎が往来で不思議な少年と出会い、輪を譲り受ける。明くる日からまた熱が出て、七つで亡くなってしまう。死なせてしまった長男を投影している。
晩年、現実主義を強めたころの作が冒頭の『殿さまのちゃわん』。熱い茶を喫するたびに顔を曇らせていた殿さまは、旅先で普通の厚さの茶わんに出会う。そして陶器師を呼び「いくらじょうずにやいても、しんせつ心がないと、なんの役にもたたない」と諭す。技術にも人の心を込めねばならないことを、子どもたちや企業人にも学んでもらいたい。
(2021/8/10 05:00)
総合1のニュース一覧
- 第一生命、豪ウエストパックライフ買収 728億円 20年間の独占販売提携(21/08/10)
- ソフトバンクGの4―6月期 当期益39%減 Tモバイル売却の反動響く(21/08/10)
- 東京都、燃料電池ゴミ収集車の試験運用開始(21/08/10)
- ワクチン加速、内需回復に期待 エコノミストに聞く、21年下期・22年上期(21/08/10)
- 清水建など、音環境制御システム 開放エリアの拡声抑制(21/08/10)
- 住友林業とアサンテ、アフリカ産バラ・木工コラボ(21/08/10)
- 研究開発費、12年連続増 DX推進7割超す 本社アンケート(21/08/10)
- 脱炭素への処方箋 液体合成燃料(3)普及価格、水素調達カギ(21/08/10)
- 三菱UFJ、ITRIと提携 日台半導体連携を支援(21/08/10)
- 日立建機、常陸那珂で鉱山機械2倍増産 世界で需要急回復(21/08/10)
- 産業春秋/殿さまのちゃわん(21/08/10)
- おことわり/「光の集積」は休みました(21/08/10)