(2021/8/11 05:00)
感染対策を緊急避難だけでなく、社会変革を進める力として利用できないか。
政府の2021年版厚生労働白書は、新型コロナウイルス感染症による社会保障への影響をメーンに分析した。雇用調整助成金などの公的支援を大々的に講じたことにより、リーマン・ショック時より失業率の上昇を抑制できたと評価。同様に生活保護の増加も低い水準となっている。
一方、休業や労働時間の面では子育て女性やフリーランスの労働者への影響が大きかった。自粛生活では家事・育児時間が増加し、女性が余暇を削って対応する傾向が見られた。同省は「性差により負担に偏りがあった」現状を分析した。
テレワークの実施率でも、正規労働者が42・2%に対し、非正規では18・0%にとどまるなど大きな違いがあった。こうした労働環境による格差は将来、解決すべき課題といえる。
施策の方向性は的確と言えよう。とはいえ、現在も進行中のコロナ禍を「未成の課題を(前倒しで)経験している」(同省幹部)とだけとらえるのは、十分ではない。
少なくない企業が、テレワークや会合自粛などの現在の感染対策を、ある種の緊急避難と考えている。ワクチン接種が行き渡り、集団免疫ができて国民が「古い日常」を取り戻せば、ビジネススタイルも元に戻ってしまう恐れがある。
望ましいのは、テレワークだけでなく労務管理や従業員教育などにも積極的にITを取り入れ、個々の企業が生産性を高めていくことだ。
企業活動に限らない。昨年4月の緊急事態宣言時には、医療機関の多くがオンライン診療を実施した。しかし現在も続けているケースは少ない。厚労省は「生活習慣病のフォローなどの可能性はある」という。多忙で通院がおろそかになりがちの中高年ビジネスマンにとって、福音になるかもしれない。
コロナ禍に耐えるだけでなく、社会の効率を高め、生産性向上に資する施策を政府に考えてもらいたい。
(2021/8/11 05:00)
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