社説/11年目の関西広域連合 役割を自覚し機能強化を図れ

(2021/8/23 05:00)

先の見えないコロナ禍や相次ぐ自然災害は自治体の枠を超えた連携の必要性を再認識させた。関西においてその役割を担う関西広域連合の機能強化がこれまで以上に求められている。

関西広域連合は日本初、そして唯一の複数府県にまたがる広域自治体だ。8府県と4政令指定都市が参画する。2010年12月に発足し、10年の節目を迎えた20年に、発足以来連合長をつとめた井戸敏三兵庫県知事(当時)から仁坂吉伸和歌山県知事にバトンタッチした。11年目にあたり、改めてこの10年を検証し、次の10年につなげなければならない。

設立の趣旨は分権型社会の実現、広域行政を担う責任主体、国の事務・権限の受け皿づくりの3点。最大の実績は広域でのドクターヘリの運行。現在7機が配置され、30分以内での救急医療供給体制が構築されている。また広域防災でも成果があった。東日本大震災に際し、全国に先駆けカウンターパート(被災自治体ごとに支援担当県を割り振る)方式で被災地支援を行った。これはその後の大規模災害に対する支援モデルにもなった。さらに文化庁の京都への全面的移転も成功させた。

一方、積み残した課題も多い。最重点目標の分権型社会の実現は進んでいない。国は法整備も視野に入れるとしている。提案募集方式にこだわらずより強く働きかけをしてほしい。足元の新型コロナウイルス感染症対策も、当初は医療機器の広域融通などで一定の成果を上げたが、地域全体で新規感染者が増加し、医療資源の広域融通には限界もみえた。

21年度以降の活動の柱は引き続き分権型社会の実現、公設試験研究機関の広域連携、行政・社会のデジタル変革(DX)化の推進を掲げる。

10周年を機に発出した関西新時代宣言では、「国土の双眼構造の実現」をうたった。コロナ禍で首都圏一極集中への弊害が指摘される中、広域連合の活動と成果は全国の地域連携にも波及する。関西だけでなく日本全体の成長をけん引するために、役割を果たしてもらいたい。

(2021/8/23 05:00)

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