(2021/8/20 05:00)
今が通信会社と携帯端末販売店の関係を再考する好機だ。
総務省の有識者会議は7月、「移動体通信事業者(MNO)が販売代理店に対して、ブランドイメージを傷つけないといった一定の合理的な制約を前提に、独自商材の取り扱いを許容することが望ましい」とする報告書案をまとめた。販売店の創意工夫を引き出し、顧客満足度向上につなげてもらう狙いだ。
背景には、販売店のビジネスモデルが転換期を迎えていることがある。今春以降、NTTドコモの「アハモ」を皮切りに、オンラインで申し込みや問い合わせを受け付ける格安料金プランが相次いで登場した。コロナ禍で人と人の接触を減らす動きもあり、対面による契約の比率は今後も減少が予想される。
従来、通信会社と販売店の関係は、必ずしも健全でない。MNOが代理店に支払う販売手数料の額は、MNOが設定する目標を代理店がどれだけ達成できたかによって変わる。高額なプランの契約獲得を優遇する評価制度を最近まで設けていた通信会社もあり、データ通信をあまり使わない消費者に必要以上の契約をさせる事態を誘発しかねないと指摘されてきた。
MNOによる販売手数料体系の見直しは、消費者保護の観点から必要だ。一方、代理店は、通信会社の方針に忠実に従うだけでは収益を確保しにくくなる側面も出てくる。独自商材の強化などで、収益源を多様化することが求められる。
この試金石になるのは、総務省の「デジタル活用支援推進事業」だ。2021年度は全国約1800カ所で、スマートフォンを活用した行政手続きの方法などを主に高齢者へ教える。拠点の主力は携帯販売店であり、販売担当者は培ってきた接客技術を生かすことが期待される。
販売店は国から補助金が出ているうちに、地域のデジタル課題を解決して対価をもらう事業モデルへの転換を模索すべきだ。そうした実力がつけば発言力も高まり、通信会社と適切な距離感を保ちやすくなる。販売店の努力が消費者の利益につながることを期待したい。
(2021/8/20 05:00)
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