社説/岸田文雄政権発足 経済最優先で難局に立ち向かえ

(2021/10/5 05:00)

分配を着実に実行するには、成長の果実を大きく育てる政策が不可欠だ。

岸田文雄内閣が4日発足した。外相、防衛相の2人を再任する一方、13人が初入閣と体制を一新した。官房長官に松野博一元文部科学相を起用、経済産業相に萩生田光一前文科相を横滑りさせ、財務相に鈴木俊一元総務会長と主要ポストにベテランを配置した。

また新設した経済安全保障相に小林鷹之元防衛政務官、デジタル担当相には牧島かれん元内閣府政務官を抜てき。さらにワクチン担当相の堀内詔子前環境副大臣を含め衆院当選3期の若手・女性をそろえ、手堅さの中にも“岸田色”をにじませた。

新内閣が手がけるべきは、経済の再生である。首相は数十兆円規模の大型補正予算を編成する考え。バラマキではなく、コロナ禍で困窮する世帯に支援を届け、同時に将来の成長を見据えた分野への集中的な投資に結びつく施策とすべきだ。

成長分野としては、デジタルや脱炭素関連、サプライチェーン強靱(きょうじん)化などが考えられる。ここに思い切った支援をすることで、首相が唱える「成長なくして分配なし」を実現してもらいたい。

同時に財源の議論も必要だ。赤字国債の発行に頼るだけでは財政の先行きを危うくする。税収の拡大策の検討から目を背けてはならない。

首相は消費税について、今後10年程度は引き上げないと表明するが、財源確保の道を閉ざすべきではない。一方、一部に法人税率上げを求める声もある。日本の法人実効税率は諸外国に比べまだまだ高い。コロナ禍でも多くの企業は雇用を守り、社会の安定に寄与している。まずは経済を建て直すことで、税収の自然増を計るべきだろう。

中小・零細企業は、コロナ禍もあって構造改革が遅れている。この改善を最重要課題と位置付けることが、結果として財政を好転させよう。

衆院選は19日公示、31日投開票と固まった。目下の難局を打開するためにも、経済最優先の政策を求めたい。

(2021/10/5 05:00)

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