社説/スーパーシティ構想 実証から実装へ具体策が必要だ

(2021/10/12 05:00)

内閣府がスーパーシティ型国家戦略特別区域(スーパーシティ)構想に名乗りを上げる、31自治体に対して求めていた提案再提出期限の15日が迫る。全提案が差し戻しとなり、自治体の中から困惑の声も上がった。システム作りなどの手段が目的化しないように、各自治体が目指す街づくりが着実に進展する提案を期待したい。

情報通信技術(ICT)を活用した新しい街づくりへの取り組みは、わが国では2006年前後に始まり、その後、再生可能エネルギー活用など、環境との共生を掲げたスマートシティー1・0版や、ビッグデータ(大量データ)解析などで社会課題を解決するスマートシティー2・0版の実証実験が、全国各地で行われてきた。

この間、「GAFA」に代表される巨大プラットフォーマーの台頭や、人工知能(AI)などの技術革新が進展し、社会や産業構造が変化するとともに理想とする街づくりの姿も変貌を遂げてきた。

分野横断でのデータ利活用を促進するスーパーシティ構想の目玉は、規制改革と一体で新たな取り組みに挑むこと。これまで以上に実現への期待は大きいが、実証実験から実装・実用化に至る壁は従来と同様に高い。

先行するスマートシティーでも、多くは実証実験止まりで、事業化に進めていないのが実情だ。実装・実用化への壁を打ち破る方策を別途考えていかなければならない。

インフラ業界に詳しいKPMGコンサルティングの馬場功一パートナーは、小さな成功体験を積み重ねる地道な施策のほか、「人やノウハウ、資金を集積する組織を特別目的会社(SPC)として作り、自治体、企業、資金提供者が公民連携する」ことを推奨する。具体化を支援するスキームとして興味深い。

練り直しになった構想も実現しなければ絵に描いた餅になってしまう。実現に向けて、広く知恵を持ち寄りたい。

内閣府は再提出された提案から数カ所を採択する方針。選考過程に透明性を持たせ、説明責任を果たしてもらいたい。

(2021/10/12 05:00)

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