社説/首都直下地震への備え 都市の“弱点”再点検が必要だ

(2021/10/13 05:00)

7日夜に発生した千葉県北西部を震源とする地震は、都市の脆弱(ぜいじゃく)さを再認識させた。いずれ起こる可能性が高い首都直下地震への警鐘とすべきだ。

今回の地震の規模はマグニチュード(M)5・9。東京23区内で最大震度5強は、東日本大震災以来10年半ぶりだった。

インフラへの被害では水道管の破裂が相次いだ。以前から水道管の老朽化は指摘されていた。耐震性の高い管路への更新を着実に進める必要がある。

新交通システム日暮里・舎人ライナーの脱輪は深刻に受け止めるべきだ。震度5強でなぜ脱輪したのか。原因を究明し対策を講じてもらいたい。

帰宅困難者対策にも課題が見いだされた。東京都は首都直下地震への備えとして「帰宅困難者対策ハンドブック」を作成し、「72時間は帰らず会社や学校に待機」を呼びかけている。

ただ、今回のように発生時間が22時41分と夜間の場合、会社に戻ることもできず、情報を求めて駅周辺に人が殺到し、パニックが発生する危険性もあった。都は駅周辺の公共施設を帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設に指定しているが、収容人員は限られている。民間に協力を仰ぎ、収容能力を高めたい。災害の規模と発生時間帯別に、より詳細な想定集も必要だろう。

情報を伝達する手段も重要だ。通信事業者などと連携し、地域ごとに適切な情報を知らせる仕組みを講じたい。

企業も自社の事業継続計画(BCP)を再確認し、帰宅途上の社員の安全確保を考えたい。社員を会社に戻して滞在させるのかなど、より具体的な対応を想定する必要がある。帰宅した社員には、翌日以降の出勤について明確に指示をすべきだ。大規模地震が発生すればしばらく余震が続くことになる。必要不可欠な人材を除き、自宅待機や在宅勤務とあらかじめ決めておけば、混乱を回避できる。

首都直下地震は30年内に70%の確率で発生すると言われる。規模もM7クラスと、ケタ違いの被害を覚悟しなければならない。今回得られた教訓を踏まえ、備えを充実させたい。

(2021/10/13 05:00)

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