(2021/11/5 05:00)
自動車産業のみならず、日本の将来にとって、蓄電池の性能向上とコスト低減が必要不可欠なのは間違いない。国内に開発・生産拠点を確保しつつ、世界で勝てる蓄電池産業の育成に戦略的に取り組まねばならない。
政府は2035年までに乗用車新車販売を100%電動車(ハイブリッド車を含む)とする目標を掲げる。その中で最重要部品となるのが蓄電池だ。開発・実用化に向け総額2兆円のグリーンイノベーション基金から、次世代蓄電池やモーターへの支援を今後10年間で、最大1510億円拠出する方針。
欧米や中国政府も蓄電池開発に大型支援を表明している。今後、支援対象の選定や資金の分配は、競争領域と協調領域を明確にした対応が求められる。
次世代電池の開発や量産化支援は、広く浅くではなく、有望技術や投資意欲のある企業に重点配分する競争重視の領域と位置付ける。全固体電池など次世代電池で日本は技術面で優位にあるが、中国が急速に追い上げている。国内企業の競争を促し、強いところをより強く引き上げ、国際競争力を高めたい。
一方で、レアメタルなどの資源確保やリサイクルについては、協調領域として官民連携でビジネスモデルやルールづくりに取り組む必要がある。蓄電池は車載用で使用済みとなったものを、家庭用蓄電池に再利用したり、災害時に緊急給電に利用したりするなど、従来以上に幅広い利用が想定される。
欧州では企業に電池の回収や材料の再利用状況の開示を義務づけるなど先行した対応が始まっている。中国も大手電池メーカーが原材料に再生品を利用する方針を打ち出している。
日本は使用済みリチウムイオン電池からニッケルやコバルトは回収するが、リチウムの回収はできていないなど、取り組みが遅れている。再利用の事業モデルも実証段階が大半だ。世界的なルールづくりで立ち遅れないためにも、国内で連携した取り組みが必要である。
蓄電池の熾烈(しれつ)な国際競争を勝ち抜くために、競争と協調の視点で事業の加速を促したい。
(2021/11/5 05:00)
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