(2021/11/8 05:00)
東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が2022年1月1日に発効する。世界の国内総生産(GDP)の3割を占める自由貿易圏が誕生する。効果を最大限発揮させつつ、中国に自由貿易のルールに沿った行動を求めることが重要である。日本は毅然(きぜん)とした姿勢で、協定を主導すべきだ。
RCEPは日本や中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)などの15カ国で構成する。すでに日中など8カ国は国内での批准作業を終え、今回豪州とニュージーランドが国内手続きを完了したことから、発効の条件が整った。
日本にとって貿易総額の約5割を占める地域との経済連携協定であり意義は大きい。日本からの輸出にかかる関税の撤廃率は、品目数ベースで86―100%。例えば中国向けは従来8%だったのが86%に、対韓国は19%が92%に大幅に拡充される。
日本の自動車産業は中国・ASEANで部品生産と組み立てを連携して行っている。関税撤廃で、生産拠点を多層化すれば、サプライチェーンの強靱(きょうじん)化がはかれる。
また農産品分野で、対中国向けホタテ貝、サケなど魚貝類の一部や清酒などの関税撤廃を獲得したことも、国内農業・漁業の活性化につながる。
RCEPは関税の撤廃、引き下げだけでなく、検疫措置の透明性や、サービス貿易や投資に関する内国民待遇義務、知的財産の保護、政府調達の手続きの透明性確保など、さまざまなルールがある。中国やASEAN諸国の中には、ルールの順守で課題を抱えるところもある。
中国は環太平洋連携協定(TPP)への加盟も申請中だ。TPPはRCEPに比べ要件が厳しく、現行では中国の加盟は困難と見られる。中国がRCEPでルール順守を実行できるかを見極めることが重要になる。
日本はRCEPのルール運用で、参加国全体の底上げを支援する役割を担うべきだ。コロナ禍で痛手を負うアジアを、再び成長軌道に戻すことにもつながる。岸田文雄政権の外交手腕が問われる局面である。
(2021/11/8 05:00)