(2021/11/12 05:00)
渋沢栄一の生涯を描くNHK大河ドラマが終盤を迎え、銀行や商工会議所開設などの話も出てきた。産業界に携わる身として最後まで注視したい。大河ドラマといえば過去にも渋沢が登場した1980年放送の『獅子の時代』を思い出す。
主人公は幕末に渋沢らとパリ万国博覧会へ参加した会津藩士。帰国後は各地を流浪し、最後は渋沢の出身地に近い埼玉・秩父で住民蜂起に参加する。
「秩父事件」は当時、生糸の暴落で養蚕農家の生活が困窮し、圧政に怒った農民らが高利貸しや役所などを襲撃した事件。結局は鎮圧され関係者は処罰される。耕作に不向きな土地柄から繊維業に偏っていた産業構造も、その遠因だった。
大正時代に入り、秩父山中の石灰石を原料にセメント産業が勃興し、地域経済が安定。裾野産業も広がり、モノづくりの力が蓄えられていった。戦後は電子・精密機器や金属加工など製造業が集積。最近は若手経営者主体の工業会や異業種連携組織による協業が活発だ。
渋沢は秩父のセメント会社設立に関わり、これを輸送する鉄道敷設も支援した。産業近代化の歴史の裏には常に渋沢が存在する。たまたま大河ドラマを見てつながった秩父も例外ではなかった。
(2021/11/12 05:00)