産業春秋／藤井新竜王

圧巻の４連勝で将棋界最高峰のタイトルを奪取した藤井聡太新竜王。王位・叡王・棋聖と合わせて１９歳３カ月の史上最年少で四冠保持となる。２０１６年１２月のプロデビューから５年弱。数々の記録を塗り替えてきたが竜王奪取で「藤井時代」の到来が鮮明になった。

藤井四冠にとって最初に６連敗を喫した豊島将之前竜王戦はこれで７連勝。対戦成績も１３勝９敗と勝ち越す。苦手をつくらないこともトップ棋士たる条件の一つだ。

次の狙いは２２年１月開幕の王将戦七番勝負。精鋭７人による挑戦者決定リーグ戦は４連勝中で２１年度中の五冠も射程圏だ。その先には最短で２３年春となる名人位挑戦も見える。

ストレート決着の影響を受けたのは第５局以降の開催地。特に第５局予定の岡山県倉敷市は２５年ぶりの竜王戦開催に向け、市を挙げて支援していただけに新竜王の強さに複雑な側面もあるだろう。だが盤上の勝負は忖度（そんたく）なきもの。

藤井四冠が昼食で英気を養うご当地グルメもたちまち人気になるなど全国各地を行脚するタイトル戦は地域のにぎわい創出に結びつく。各都市が最終局分までを含めた誘致に力を入れることは将棋界の盛り上げとともに地域活性化につながる糧となる。