(2021/11/16 05:00)
社名の存続より、実質的な企業の再生を優先した決断と言えるだろう。
経営再建中の東芝が、グループ全体を3社に分割し、それぞれを上場する新たな計画を決めた。エネルギー、インフラ、昇降機など少数顧客が中心の事業をインフラサービス会社に、半導体とハードディスク駆動装置など投資の大きな事業をデバイス会社に再編する。相互に株の持ち合いはしない。
本体である東芝は、キオクシア(旧東芝メモリ)と東芝テックの株を保有する。ただキオクシアの株は現金化して株主還元する方針。株の売却後はテックと一体化し、東芝そのものがなくなる形も予想される。
綱川智社長兼最高経営責任者(CEO)は、これを「解体ではなく進化だと考えている」と説明した。こうしたスピンオフ計画は日本の巨大企業としては初の試みだという。
総合電機メーカーは、エレクトロニクスに関連した事業を多角展開し、複合企業として成長してきた。それは旧財閥の企業グループや系列取引に助けられた側面が大きい。ある程度、性能が認められる製品を作れば優先的に採用してくれる顧客が国内に存在していたのだ。
市場がグローバル化し、海外で顧客を開拓する必要が生じると、総合電機という業態が疑問視されるようになった。東芝はカンパニー制採用など何度も改革に取り組んだが、結果的に成功しなかった。
名実ともに総合電機の業態を廃し、事業の特質に応じて専門的かつ俊敏な経営を目指す考えは理解できる。すでに優良事業であるキオクシアは東芝の名を脱した。分割する新会社も東芝を名乗らないかも知れない。
従来のシナジーが失われることへの懸念や、社内外の抵抗もあろう。何より株主の賛同を得なければ進めない。重要なのは社名の存続ではなく、培った技術力を生かして社会に貢献し、認められることだ。
前途は予見しがたいが、このスピンオフが有効であれば、他の日本企業にとっても一つの指標となろう。
(2021/11/16 05:00)
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