(2021/12/2 05:00)
日産自動車が電動車戦略を公表した。巨大市場にゲームチェンジを迫る電動化の加速を追い風ととらえ、挑んで欲しい。
日産は2030年度までに電気自動車(EV)の新型車15車種を含む23車種を投入、今後5年間の開発に2兆円を投じる。EV性能の死命を握る蓄電池は、全固体電池を自社開発し、28年度までに搭載車を発売する。
過去の無理な拡大路線による負の遺産処理に負われた状況から脱し、2022年3月期は黒字転換する見込み。今回公表した戦略は、日産が構造改革段階から、新たな成長の段階へステップを上げたことを示した。
ただ、世界を見れば日産の方針は、決して画期的ではない。独フォルクスワーゲンや米ゼネラル・モーターズはより大胆なEV化方針を打ち出している。トヨタ自動車はEV、ハイブリッド車、燃料電池車に加え水素エンジンにも取り組む全方位型で挑むと表明している。中国には安価でEVを生産する新興メーカーが続々と誕生している。
では日産の強みは何か。10年に世界初のEV「リーフ」を発売したが、普及には至らなかった。しかし失敗の経験こそが貴重である。なぜ、どこに課題があったのかを突き詰めた先に解は見つかる。仏ルノー・三菱自動車との3社連合による規模のメリットも優位に働く。
何より重要なのは、従業員や部品サプライヤーといった日産の企業価値向上を支えるステークホルダーとの関係強化だ。赤字経営下でルノーとの経営統合問題が紛糾した当時、経営陣と従業員の関係には距離が生じていた。部品メーカーは日産の拡大路線とコスト最優先の調達方針に直面し、将来の開発や投資に踏み出す余力を失っていた。
3社連合は、経営統合ではなく、開発や生産面の協力強化を優先する方針が明確になった。部品メーカーとも開発初期段階から情報を共有し、長期のパートナーとする姿勢に転換した。
自動車産業はすそ野が広い。ステークホルダーを含めた総合力を高めなければ、激変期を乗り越えられない。日産の成長もそこにかかっている。
(2021/12/2 05:00)
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