(2021/12/30 05:00)
今年も残すところ2日。すでに年末休みに入った企業も多い。東京都心のオフィス街の人通りもめっきり減って、にぎやかなのは百貨店やスーパーの新年用品売り場ばかり。
歳末が気ぜわしいのは、今も昔も変わらない。「数ふればわが身につもる年月を送り迎ふと何いそぐらん」(平兼盛・拾遺和歌集)。年齢は自然に重ねるものなのに、何をそんなに急ぐのだろうか。歌人の感慨にこっけいが混じる。
日々の仕事に全力を尽くしたはずだが、やり残したことはなかったか。「ゆく年の惜しくもあるかなます鏡見る影さへにくれぬと思へば」(紀貫之・古今和歌集)。自分は無駄に年を取ってしまうのではないか反省するのもこの季節だ。
病をおして職務に励み、退任間もなく鬼籍に入った前経団連会長の中西宏明さんら各界のリーダーが墓碑に名を刻んだ。「魂まつる年のをはりになりにけり今日にやまたもあはむとすらむ」(曾禰好忠・詞花和歌集)。静かに冥福を祈りたい。
コロナ禍におびえ続けた1年。変異株の懸念は残るが、どうか読者の皆さまが明るい年を迎えられますように。「あらたまの年行き返り春立たばまづ我が宿に鴬(うぐいす)は鳴け」(大伴家持・万葉集)。
(2021/12/30 05:00)