社説/停滞30年からの脱却 「人への投資」が成長につながる

(2022/1/1 05:00)

2022年はコロナ禍であらわになった課題を直視し、新しい成長軌道を描く方向転換の年となるべきだ。成長のカギは「人への投資」にかかっている。

人類が新型コロナ感染症と対峙(たいじ)して約2年。新たな変異株が世界を襲うが、ワクチンや治療薬の開発も進む。22年はコロナと共存しつつも経済活動の本格化が予想される。

日本は停滞の30年と言われる時代の果てにコロナ禍を迎えた。デジタル化の遅れや非正規雇用者の労働環境の脆弱さなど、これまで指摘された日本の弱さがより明確となった。世界全体が急激に動きだす中で、日本は停滞から脱却する好機を逃してはならない。

日本の課題ははっきりしている。労働生産性が低く、賃金も伸び悩んでいることだ。岸田文雄政権が唱える、成長と分配の好循環を基軸とする「新しい資本主義」を実現するには、生産性を高め、分配の原資となる成長を導き出さねばならない。

デジタルと脱炭素などのグリーン関連が成長分野だ。ここに、ヒト・モノ・カネを集中させるのが進むべき道である。中でも人材の育成が最重要になる。デジタルスキルの獲得は官民挙げて取り組むべきテーマ。同時に人材の流動性を高め、成長分野に人材が集まる仕組み作りが求められる。そのためには労働法制、税制、社会保障制度を見直す必要がある。

企業は時価総額や足元の業績だけでは計れない「非財務価値」が問われている。ヒトを育て、賃金引き上げに資金を投じることは、非財務価値向上の最たるものである。中長期的な成長に結びつく人材投資を“見える化”し、それを投資家が評価するようになれば、より企業経営の持続可能性は高まるだろう。

雇用の7割を占める中小企業が人材投資に踏み切ることが、日本全体の成長に直結する。もともと労働分配率が高い中小にとって、困難を伴うものであり経営者の覚悟が問われる。政府も支援策を強化すべきだ。

「人への投資」が本格化し、日本の反転攻勢の契機となる記念すべき年としたい。

(2022/1/1 05:00)

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