(2022/1/1 05:00)
新年。皆さまに初春のお慶(よろこ)びを申し上げる。されど、一夜明けてもほの暗い時代は続く。次々と姿を変える新型コロナウイルスとの戦いは絶え間ない。すでに丸2年。3度目の正月を迎えた。それでも「何となく 今年はよいことあるごとし」(啄木)と祈りたい。
兼好法師は良い友人を「物くるる友」、「くすし」、そして「知恵ある友」といった。くすしとは医者のこと。屠蘇(とそ)気分とは無縁で、いまも治療に全力を尽くしているくすしには頭が下がる。まさに命の綱。コロナ攻防戦のさ中、故人いわく「医は仁術にして老を安んじ、人を救う道」。
一方で、治療薬やワクチンの争奪戦が激化。自国民だけ生き延び、他国の状況には目をつぶる。そんなエゴがまかり通る。
「覇権を求めず、覇権を許さず」の中国は、いまや最大の覇権主義国家。日本や米国の民主主義にもほころびが目立つ。世界には独裁政権が跋扈(ばっこ)する。人類はいま、戦う相手を間違えている。
地球は何と悲しい星なのか。元旦に「おめでとう」と言いたくても言えない人がいる。せめて心弾む優しさを贈りたい。「あらたまの 年の若水くむ今朝は そぞろにものの 嬉しかりけり」(一葉)と思えるような。
(2022/1/1 05:00)