産業春秋／平和とは

今年、米寿を迎える大先輩から賀状が届いた。いきなり「新年おめでとうは気が引ける」の書き出し。地球や地球人の混迷ぶりにいらだつ姿が行間にあふれる。

確かに、いま人類は乱調のさ中。新たな変異株の出現、地震、水害、竜巻。まだまだある。脱炭素にマイクロプラスチックス、放射性廃棄物。独裁政治や何十年も戦火が絶えない地域もある。

「波瀾万丈の地上に比べて、微塵も揺るがない天上に嫉妬する」ともあった。その気持ちを込めた一句が添えられていた。「年の瀬や宙に不動の星座あり」と。句は俳人の夏井いつきさんの絶妙な添削で人気のＴＶ番組を見て８７歳で始めたという。

太平洋戦争勃発から今年で８０年。当時、大先輩は７歳だった。田舎暮らしなのに、サツマイモと干ぼしの小魚か、大根の葉っぱとわずかばかりの米を炊いたすいとんが常食。軍国少年は食べる事を通じて戦争そのものが疎ましかったという。炎天下で米軍戦闘機の銃撃を受けたことも。

それだけに平和のありがたさは歳を重ね増幅するという。『金子兜太といとうせいこうが選んだ平和の俳句』（小学館）に、６歳の俳人の句がある。「へいわとはちきゅうもひともしなぬこと」。