(2022/2/22 05:00)
企業にとって人権尊重は、経営の根幹に関わるテーマ。知らなかったでは済まされない時代であることを認識し、取り組みを強化しなければならない。
サプライチェーン(供給網)を海外に依存する日本企業が増え、新興国・途上国での児童労働、過重労働、劣悪環境などの人権侵害に企業が間接的に関与するリスクが増大している。
いち早くリスクに直面した欧米企業は、人権侵害行為を調査し、是正する取り組みを進めており、ドイツのように法制化に踏み出す国も現れている。
スポーツ用品大手の独アディダスは、同社が部品製造、縫製加工を委託する国々で、労働者が苦情を直接申請できる窓口を設置し、労働者を雇用する企業に是正を求めるといった対応を進めている。
日本は取り組みが遅れていると言わざるを得ない。経済産業省が2021年に実施した調査では、上場企業760社のうち、人権リスクの調査を実施する企業は半数程度で、さらに間接仕入れまで調査を行う企業の割合は4分の1にとどまった。
政府は今夏にも、人権侵害防止につながる行動を示した指針を策定する。何が人権侵害行為なのか、どうやって調査すればよいのかなど、企業が取り組む上で分かりやすく、実際の行動につながるような内容としてもらいたい。
同時に指針には、技能実習生を取り巻く問題への対処も採り入れるべきだ。技能実習生の中には、出身国で高額の仲介手数料を支払って日本に来る人たちも多い。手数料が実習生を縛り、搾取の温床となっているのなら、その実態を調査し、是正していかなければならない。
見過ごせば実習生を受け入れた中小企業が、取引先から取引を停止されるなどの深刻な事態となる恐れもある。
指針策定は、国として人権重視の姿勢を内外に発信することにもなる。取引相手国の労働者が、望ましい労働環境を得ることは、その国の経済発展にも好影響を及ぼすはずだ。企業は長期的視点で、人権問題に対峙し課題を乗り越えてほしい。
(2022/2/22 05:00)
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