産業春秋/日本人の公衆衛生意識

(2022/3/2 05:00)

幕末から大正にかけてコレラの流行が繰り返した。都心に近い現在の埼玉県八潮市域では、野菜を東京に運んだ船が下肥を積んで戻っていたが、下肥の利用が感染を広げてしまう。

八潮市立資料館で企画展「疫病と向き合う人びと」を見た。所蔵品の患者死亡報告書には、1889年に「祭礼の際に振る舞われた赤飯が原因でコレラに感染」との記載がある。病除けの行事で感染拡大の悲劇が起きた。

大正中期には、スペイン風邪が世界中で猛威を振るい、国内でも約39万人が亡くなった。予防対策のチラシにある4カ条はコロナ禍に通じる。「近寄るな―咳(せき)する人に」「鼻口を覆へ―他の爲(ため)にも身の爲にも」「豫(よ)防注射を―轉(ころ)ばぬ先に」「含嗽(うがい)せよ―朝な夕なに」。

コロナ禍で日本人が誇れるのは、公衆衛生意識の高さと、その根底にある他者を思いやる国民性ではないか。ワクチンや経口薬が充足しても、多くの人はしばらくマスクが手放せないだろう。

疫病の正体が分からなかった時代から、日本人は多くの犠牲を払って災禍をいなしてきた。公衆衛生意識の高さは、先人たちから受け継がれた文化の遺伝子と気付かされる。今度は我々がコロナ禍の教訓を後世へ伝える番だ。

(2022/3/2 05:00)

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