(2022/3/11 05:00)
中小企業にとって大規模災害は経営に直結する被害をもたらすこともある。早期復旧が困難な時に備え、同業種・異業種との連携を平時から考えたい。
トラック用ボディー製造の新生自動車工業(宮城県多賀城市)は、東日本大震災で6メートルの津波が工場を襲い、壊滅的な被害を受けた。一時は復興を諦めたが、山形県にある同業者に依頼して仕事を引き受けてもらい、何とか供給責任を果たした。
同社の大津晃一社長は「経営者には被災と同時に従業員、取引先、金融機関とあらゆる対応を迫られる。事業をやめるなら簡単だが、続けるには同時多発する課題がのしかかる。一人で背負うのは難しかった」と当時を振り返る。
同社は国の補助金などを活用して事業を再建。同時に被災の経験を踏まえ、異業種7社で「仙台港自動車関連産業復興グループ」を結成、連携して事業を継続する計画を策定した。
日本商工会議所が2月に実施した調査で、中小企業で事業継続計画(BCP)を「策定済み」「策定中」と答えたのは31・5%にとどまった。策定しない理由としてノウハウや人材不足を挙げる企業が多かった。
しかし、大規模災害だけでなく、感染症やサイバー攻撃など事業継続を阻むリスクは増大している。供給責任を果たせなければ顧客を失うことになる。
政府は中小企業の事業継続支援として「事業継続力強化計画」の作成を勧めている。BCPの簡易版とも言えるものだ。計画が国から認定されると、日本政策金融公庫の低利融資や補助金申請時の優遇などが受けられる特典もある。
1月末時点で約3万8000件の計画が承認されたが、複数企業が連携した計画認定は365とまだまだ少ない。計画作成を支援する中小企業基盤整備機構は「遠隔地の企業間連携は災害時の生産協力に有効だ。経営の見直しや事業承継にも役立つ」と策定の重要性を訴える。
東日本大震災から11年。経営を襲う危機は高まっている。きょうを1社でも多くの企業が準備に着手する日としたい。
(2022/3/11 05:00)
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