(2022/3/28 00:00)
少子高齢化に伴い労働人口が減少する中、熟練の技術や経験をもつベテラン社員の技術継承が問題となっている。B2B向け製品のテクニカルサポートや、相談センター業務を受託しているSCSKサービスウェア(東京都江東区)でもこの課題を実感。メンテナンス、点検、施工、修理など既存のマニュアル、施工書、手順書などがあり基本的な作業は事足りるが、「既存資料に記載されていない、ベテランの過去の経験、ノウハウがなければ対処できないケースもある」と第三事業本部の種子田竜介課長は明かす。
例えば既存のマニュアル類に記載が無いイレギュラーな作業のケースなど、こうした情報はベテランの知見やノウハウの情報が頼りになる。
このようなノウハウは長年の経験を積んだ技術者にしか分からず、多くの企業で属人化してしまっているのが現状だ。中には、「既存マニュアル類のデジタル化が進んでおらず、紙の書類しかない企業も存在する」(種子田課長)。書類の紛失により、貴重な情報が失われてしまう可能性もある。
SCSKサービスウエアでは、実際にコンタクトセンタービジネスを行う中で培われたナレッジ可視化のノウハウを「暗黙知使えるソリューション」としてサービス化した。作業員が参考にする手順書やマニュアル、ガイド上に本来であれば記されていない技術者のノウハウなどをデジタル化し、付与。ウェブブラウザー上からその解答を検索・閲覧できる仕組みを提供する。現場の作業者や、コンタクトセンターでのFAQ(頻繁に尋ねられる質問)、作業員の教育向けコンテンツとしても活用できる。
誰にでも理解できるように、平易なキーワードを用いた説明書きをふせんのような形で追加。利用者は該当部分をクリックすると詳細な情報を確認できる。「導き」というボタンをクリックすれば、作業に取りかかる前に必要な前提知識を記した資料や、FAQに遷移するしくみも構築した。
コールセンターでの対応経験もあるスタッフが、実際の対応履歴を確認することで、頻繁に聞かれる質問内容を抽出している。個人の経験に依存してしまう情報に対しては、ベテランの作業者に対してインタビューを行うことで、情報を確認。技術継承を支援している。
ソリューションを検討する企業に向けては、現場の事前調査も実施。3ー5営業日かけて、現場課題の洗い出しや、ソリューションを導入した場合の効果などをまとめたリポートの提供が可能だ。
2021年には大手空調機メーカー2社へ同ソリューションの導入を開始。現在、検索精度の高度化や、ナレッジの拡充に取り組んでいる。
種子田課長は「ソリューション提供の迅速化にも挑戦したい」と意気込みを見せる。現在は、情報の付け足し作業は全て専門のスタッフが手作業で行っている状況。今後は、RPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)の活用により、工数削減を図る。
対話音声をもとに課題を洗い出す作業にも時間を要しているため、人工知能(AI)を活用した音声認識、要約技術の活用も進める方針だ。企業への導入スピード加速を図り、22年度には本格的な提供拡大を目指す。
アプローチする業種の拡大も検討している。現在は、オフィスや店舗などに取り付けられた業務用空調機メーカー向けに提供しているが、「今後は給湯器や太陽光発電などのビルファシリティのほか、建築・建設業界、医療機器メーカーなどへの展開も予定している」(同)。
ベテラン社員の技能継承や、世代を超えたノウハウの共有は、事業継続に向けて早急に対処しなければならない課題の一つとなっている。少子高齢化や労働人口の減少などの問題が加速する中、こうしたITソリューションの引き合いも今後ますます強まりそうだ。
SCSKサービスウェア株式会社
https://www.scskserviceware.co.jp/
暗黙知使えるソリューション 紹介ページ
https://www.scskserviceware.co.jp/service/integrated-bpo/lp/tacit-knowledge/
(2022/3/28 00:00)