(2022/4/15 05:00)
日銀が金融政策の正常化に動きやすい環境を整える上でも、財政の健全化を今から真剣に議論する必要がある。
日米“真逆”の金融政策が招いた円安と物価上昇は、日本企業の業績と家計の台所を脅かしている半面、日銀の異次元緩和が国債の利払い費を抑制する効果を発揮してきた。日銀が金融引き締めに転じれば利払い費は膨張し、財政が圧迫される副作用を伴うことになる。
日銀が異次元緩和の“出口戦略”を模索する際、機動的に金融政策を講じられるよう、財政健全化で後押しする必要がある。財政健全化により社会保障の持続可能性が担保されれば、家計の将来不安が払拭(ふっしょく)され、個人消費を喚起する効果も期待できるはずだ。
コロナ禍対策やインフレ対策のための財政出動は当然だ。岸田文雄政権は効果的に予算を措置し、減速が懸念される日本経済を下支えしてもらいたい。
問題は、実現可能で現実的な財政健全化目標が存在しないことだろう。歳出をいかに減らし、歳入をどのような成長戦略で拡大していくのか、岸田政権は足元の課題に対処しつつ、中長期的な財政健全化の道筋も示すことが求められる。
日本の国債発行残高は2021年度末に1000兆円を超す見込みで、主要国中で最悪の財政事情にある。22年度から団塊世代が75歳以上となり、医療・介護などの社会保障関係費も膨張していく。一方、日本の20年の1人当たり国内総生産(GDP)は世界24位と生産性が低い。メリハリを利かせた歳出抑制を進めつつ、技術革新と生産性向上に資する施策を促進するほか、格差是正に向けた金融資産課税の見直し、分厚い中間層形成に向けた所得課税のあり方などの議論を通じ、歳入構造も修正する必要があるだろう。
日銀の黒田東彦総裁の任期満了まで1年を切った。良くも悪しくも政策にブレがなく、異次元緩和は最後まで修正されないとの市場の見方が有力だ。“ポスト黒田”が多様な政策の選択肢を駆使できるよう、環境は今から整備しておきたい。
(2022/4/15 05:00)
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