産業春秋/ウクライナ製鉄所から目をそらすな

(2022/4/27 05:00)

 鉄は未来を切り拓く原動力である。古くは殖産興業の象徴、経済成長の過程では鉄の生産量が国力を映し出し、現在は、脱炭素化につながる革新的な技術開発が進む。日中友好に貢献した過去もある。そんな歴史が日本製鉄の君津の製鉄所に残る

 「鄧小平階段」。改革開放を進める鄧小平副首相が1978年にここを訪れた際、視察用に造られた緩やかな専用階段だ。「同じ製鉄所を建設してほしい」。鄧氏はこう要望し、上海宝山製鉄所の原点となった

 一方で未来はおろか、明日をも知れぬ極限状態にある人々が製鉄所で身を寄せ合う光景に目を疑った。ロシア軍に包囲された東部マリウポリにあるアゾフスタリ製鉄所。地下にはシェルターやトンネルがつながっているという 

 ウクライナ軍がマリウポリでの最後の砦(とりで)とし、玩具や人形を手に身を寄せ合う子どもたちや乳飲み子を抱いた母親の姿が映し出される。光の届かない閉鎖空間で、恐怖を宿した瞳が目に焼き付いて離れない

 ロシアによる侵攻から2カ月。命からがら国境を越える人、戦火におびえる人。国家間の友好に貢献した製鉄所はここでは戦場だ。観るに堪えない映像だが目をそらしてはならない。

(2022/4/27 05:00)

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