(2022/6/14 05:00)
景気後退下での物価上昇「スタグフレーション」への懸念が世界で高まっている。懸念されるのは新興国・低所得国ばかりではない。13日の東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=135円台と20年4カ月ぶりの円安水準だった。日本も輸入物価の一段の上昇が懸念され、産業界および政府は警戒を強めたい。
エネルギーと食料の価格が高原状態から抜け出せない。コロナ禍からの回復に伴う需要拡大、ウクライナ情勢に伴う天然資源と穀物の供給制約、中国のロックダウン(都市封鎖)による供給網の混乱など負の要素が幾十にも重なり、経済成長を上回る物価上昇が各国を直撃する。
経済協力開発機構(OECD)はこのほど2022年の物価上昇率を8・5%と見通し、21年12月時点の予測を4・3ポイントも引き上げた。上昇率が倍増する見立てが事の深刻さを語る。
この急激な物価上昇を主因に、世界銀行は22年の世界の成長率を2・9%と見通し、1月時点の予測を1・2ポイント下方修正した。中でも主要国の利上げにより、自国通貨安と資本流出、穀物相場の高騰に見舞われている新興国・低所得国はスタグフレーションに陥るリスクが高い。
問題は、主要国が景気よりインフレ退治を優先し過ぎないかという点だ。行き過ぎた利上げが景気後退を招く可能性に留意したい。特に米国は14、15の両日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅な利上げが予想される。5月には22年ぶりに通常の2倍に当たる0・5%の上昇幅としたが、6、7月も0・5%、あるいは0・75%の利上げも取り沙汰されている。
欧州中央銀行(ECB)も7月の理事会で政策金利を0・25%、9月理事会で0・5%引き上げることが想定される。
日銀は主要国とは真逆の金融緩和を貫き、日米金利差の拡大がさらなる円安と輸入物価の上昇を招きかねない。政府・日銀による為替介入も米国の協力なしには実現しない。7月の参院選は物価上昇が争点の一つになると見られ、政権には十分な警戒と機動的な対応策も視野に入れてもらいたい。
(2022/6/14 05:00)
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