(2022/6/22 05:00)
参院選が22日に公示される。投開票は7月10日。争点の一つは物価高対策だ。効果的かつ現実的な対策とは何か、各党の公約を慎重に見極めたい。
仏総選挙で与党連合が過半数を大きく下回り、11月に中間選挙を控えるバイデン米大統領の支持率が4割前後に停滞しているのは、いずれも物価高が一因だ。ウクライナ情勢に伴うエネルギー・原材料価格の高騰で広範な製品価格が急騰し、有権者の強い反発を誘発している。
日本は米欧と比べて消費者物価指数の上昇率は緩やかだ。米国とユーロ圏の5月の上昇率は前年同月比8%台に達し、日本の4月の指数(生鮮食品を除く)は同2・1%にとどまる。だが日本の5月の国内企業物価指数は同9・1%も上昇しており、価格転嫁が円滑に行われていないことに留意が必要だ。
中小企業は仕入れ価格の上昇分のうち、4割しか発注企業に価格転嫁できていない。米欧より緩やかとはいえ家計は物価高を肌で感じ、価格転嫁が不十分な企業は業績に不安を募らせていることを忘れてはならない。
各党の公約を見ると、自民党はエネルギーと食料品に特化した物価高対策を掲げ、これまでの原油高対策などで物価上昇率が米欧などの4分の1程度に抑えている成果を強調する。野党は消費税の減税・凍結など消費税率の見直しやガソリン減税、一律10万円の現金給付など家計に直接訴えかける施策が目立つ。また円安につながり、輸入物価の上昇を促しかねない異次元の金融緩和見直しを求める訴えも野党内にはある。
他方、賃金の引き上げや、安全が確認された原子力発電所の再稼働など、与党と同様の公約を掲げる野党もある。経団連の十倉雅和会長は20日の会見で消費税減税に否定的で、継続的な賃上げの重要性を示していた。
各党による物価高対策の公約は、全体として財源の議論が後回しにされた印象を受ける。防衛費の増額も多くの政党が必要性を訴えながら財源が見えにくい。選挙期間中、各党が痛みを伴う問題に言及しているかも見極めていく必要がある。
(2022/6/22 05:00)