(2022/6/21 05:00)
鉄鋼大手による水素還元製鉄など脱炭素の国家プロジェクトが始まった。当面、複数の手法で二酸化炭素(CO2)排出量の従来法比50%超削減を目指す。欧州、中国との競争が激化する中、量より質を指向する日本勢の技術力を発揮してほしい。
鉄鋼業のエネルギー起源CO2排出量は日本全体(家庭、運輸など含む)の15%を占め、その削減は待ったなしだ。同プロは日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所などがコンソーシアムを組む。今後10年の事業規模は約4363億円で、約1935億円は国のグリーンイノベーション基金で支援される。
製鉄工程の脱炭素化は「前人未到の革新技術が必要」(橋本英二日鉄社長)とされる。一点に絞り込めるものはなく、原料炭由来のコークスの代替で水素を還元材に使う技術、CO2排出が高炉より少ない電炉の大型化などを組み合わせる。開発の道のりは平たんではなかろう。
日本の鋼材需要は人口減やアジアの経済成長などで先細り傾向にあり、余剰生産能力をそぎ落とす構造改革が進む。こうした中で高炉排ガスのCO2を水素と反応させてメタンを合成して使う“リサイクル高炉”を構想するなど、各社は多くの経営資源をつぎこもうとしている。
ただ全く白地からの出発ではない。10年来取り組んできた新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業の「コース50」は脱炭素化の前哨戦で、鉄鋼3社は製鉄所内水素を使う還元の要素技術にめどを付けつつある。外部調達する水素などを用いる「スーパーコース50」という新たな段階への円滑な移行につながりそうだ。
脱炭素のゴールまで30年を切る中、今後10年の取り組みが重要なのは間違いない。中間評価を適正に行い、必要なら軌道修正や開発の加速を決断するべきだろう。開発成果を中堅・中小の電炉専業を含め、実際の生産に早期に生かすことも肝要だ。
日本は中印に次ぐ世界3位の粗鋼生産量を誇る。脱炭素技術の開発が鉄鋼業全体の持続的発展をもたらすように、政府の支援策を有効に活用したい。
(2022/6/21 05:00)
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